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ワイン女子物語〜サキの場合⑩最終話〜

試飲会で出会った相川。食事に行くことになったユウト。仕事だけではなく、“女”としての人生も、今動き出す。

2017.01.24  Written by ゆれこ

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無い無いづくしのアラサーOLサキは仕事を辞め、親戚のおじさんが経営する乃木坂のワインショップで働き始めた。(サキの紹介、第一話はこちら

大学時代の友人ユイにまんまと騙され参加した試飲会合コン。(前回のお話:「ワイン女子物語〜サキの場合⑨〜 」はこちら)そこで出会った相川とフリータイムで再び合流する。明るく屈託無く話す相川に、人見知りでひねくれもののサキも少しずつリラックスしていく。

試飲会はフリータイムに。ワインを片手に好きなように話し始める参加者たち。

「どうだった?あんたのテーブルは。」

「どうだったじゃないでしょ!何これ合コンじゃん!しかもユイは別のテーブルだし。」

「ごめんごめん(笑)私と一緒だと、サキ話さなくなるかと思って。」

「た、確かに、、、」

「んで、どう?いい人いた?」

「何かワイン初心者と、いつもワイン飲んでますっていう詳しい人が混在していて、ちょっと困った。」

「確かに、ワインの知識レベルでは制限なかったもんねー。私のテーブルにもいたよ、うんちくおばさん。」

「うちはうんちくおじさんの方がいたよ(笑)」

自分たちのテーブルにいたヘンな人の話をわいわいしていると、自分たちに近づいてくる影が横目に見えた。

「さっきはありがとうございました!!」

振り向くと私のテーブルで最初にペアになった相川とその連れらしき背の高い細身の男性が立っていた。

「あ、どうも。」

「サキと同じテーブルだったんですか?私サキの友達で今日一緒に来てるんですよ。あ、ユイといいます。よろしく!」

返す言葉を捜していると、ユイがすかさず自己紹介を始める。

相川の連れは、顔は堀が深くてすらっと高身長、少し明るめのネイビーの細身スーツの着こなしが特にユイのドストライクだ。

相川が勧めてくれた赤ワインのおいしさに心が緩む。

ユイに気をとられていると、相川が赤ワインを差し出してきた。

「この赤ワインさっき試飲したらおいしくて。1杯どうですか?」

差し出されたワインはアナベラ カベルネ ソーヴィニヨン ナパヴァレーというらしい。

「これ、あのオーパスワンの隣の畑で作られているらしいですよ!!カシスやチェリーの果実味が豊かでおいしいです!あ、さっき教えてもらったばかりの言葉使ってみました(笑)」

思わず笑ってしまった。

一口飲むと、確かにたくさんの果実を感じる。程よくタンニンも利いていて、赤ワイン好きもうなずくおいしさではないだろうか。

「これ仕入れようかな。」

「仕入れ?レストランかなんかで働いているんですか?」

「あ、いえ、実は試飲会に参加するなんてお恥ずかしい話なんですが、最近ワインショップで働き始めまして。ニューワールド系はぜんぜん詳しくなかったんで参加してみようかなと思ったら、ユイに騙されて合コン形式だったんで。」

「あ、だからあんまり話したくなさそうだったんですね!嫌われること言ったかと思ってました。」

「いえ!!!」

思わず声に力がこもってしまった。やる気の無さが伝わってしまっていたのか。

相川はフリータイムに見つけたワインの話を楽しそうに教えてくれた。そして、憧れのオーパスワンを飲んでみたいと話した。ヨーロッパ至上主義のワイン界において、アメリカでここまで人気で格の高いワインを作り出したことがかっこいいと言っていた。

ユイのほうに目線をやると、

「(そろそろかえろうか。)」という顔をしていたので、私も相川にお礼をして会場を出ようとした。」

「あの、ラインだけ教えてもらえませんか?」

預けた荷物を取りに行く途中、相川にそう話しかけられ、いやな気はしなかったのでラインを交換した。

「しっかり捕まえてるんじゃん(笑)」

「まあ、うん。」

初めての試飲会、かつ初めての婚活イベント会場を後にした。

ついにユウトと二人で食事に行く日。

ユウトとの食事の日。それは予想していた現実と、新しい現実が入り混じる複雑な一日になった。

「遅れてごめん!」

そういって小走りにユウトは現れた。レストランは最近ネットニュースか何かで見た、ニューオープンの鉄板焼きだ。

「ここ、料理はお任せで良いかな?そのほうがおすすめメニューを食べられるし。」

「あ、うん。」

「ワインリストを持ってきて。」

慣れた風に店員と話し、ユウトが好きだという赤ワインを注文している。

「奥様もご一緒のワインにされますか?」

私たち二人が結婚しているように見えたのだろうか。普通このレベルのレストランなら、お連れ様とか関係性はごまかすよなーと心の中で苦笑いをする。

「私もそれをいただきます。」

「今は東京で一人暮らし?結婚してるの?」

奥様には触れないでいようと思ったのに、無邪気なユウトは臆することも無く私の身の上を聞いてくる。

「一人暮らしだよ、ここから一本。」

おいしそうな料理が湯気を立てて焼かれていく中、東京の大学に進学し、2つの会社で働いたこと、そしてその会社も辞めて地元のおじさんのワインショップで働き始めたことを一通り一気に話した。仕事は何かと聞かれたけれど、営業、とだけ答えてITとは言わなかった。

ユウトは東京の有名大学に進学するも、中退し海外の大学に入りなおしたらしい。24のときに日本に帰ってきてからは、ベンチャー企業の営業やプロジェクトマネージャーをやり、現在は執行役員にまでなっているという。

予想を上回るというか、予想通りというか、ユウトは想像できないくらい日々アクティブで常に自分の意思で道を選んでいる、そんな印象は高校の時に抱いた印象とさほど変わらなかった。

「相変わらずすごいね。」

「何もすごくは無いけど、充実はしているかな。やりたいことは無限にあるよ。」

「でも、ワインショップで働くサキちゃんを見たとき、サキちゃんも変わらず一途で一生懸命な子だなと思ったよ?」

突然そう言われてびっくりして目を見開く。高校の時にそんな印象を与えていたのは意外すぎた。

「せっかくの再開と、新しい職場、ワインショップでの門出を祝って、特別なワインでも頼もうか!俺が飲みたいだけだけど(笑)」

そういって店員に注文し、テーブルに届けられたワインはなんと、「オーパス・ワン」だった。

一瞬相川の顔が浮かんだ自分に驚く。

「俺も飲むのは2回目だけど、やっぱりうまいな。あとフランスでもイタリアでもなくアメリカって言うのが良いよね。どう?」

「こんな高いワインでもほんとおいしい。」

コメントまで相川と一緒なんて。

初めてユウトと飲むワイン、初めてのオーパス・ワン。

初めてのレストランでの食事はおいしい料理と最高のワインで進んでいく。

ちょっとといって電話を持って出て行ったユウトの左手に、シルバーの指輪がはめてあることはずっと気づいていた。

席に戻ってきたユウトが、私のケータイのLINE通知が表示されていることに気づく。

「もしかして彼氏??」

「いや、そんなんじゃないけど。」

LINEの相手は相川だ。今度良かったらワイン飲みに行きませんか?なんでもない誘い文句だが、自分がこの誘いを断らない事を私は知っている。

大きめのグラスに残った一口のオーパス・ワンを、ゆっくりと口の中に流し込んだ。

この記事を書いた人Author

ゆれこ

辛口泡系とフルボディの赤のしっかりしたワインと肉料理が好み♩お勉強のために"神の雫"を読み直しています!


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